◆「メロスは懸命に走っていたのか?」の検証
一般的にメロスの走りは文中(特に後半)「沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った」「死力を振りしぼって走った」などと表現されており相当なスピードであったのだろうと認識されていると思います。
中学校2年村田一真くんは、『走れメロス』本文の記述から時刻などを推定し、メロスの平均時速を計算してメロスの真の速さを客観的に評価しようとしています。
着眼点が素晴らしい!!
信憑性はともかく、時刻やロスタイムなど、とても丁寧に分析しているところが秀逸です。
メロスの疑惑の3日間
1日目(往路|39㎞)
☞シラクス~村:【時速3.9キロ】
2日目(結婚式)
☞結婚式~羊小屋にstay
3日目(復路|39㎞)
☞村~シラクス
・前半:野や森を進む!【時速2.7キロ】
・後半:濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し、最後の力を振り絞って走る!
【時速5.3キロ】
※参考
・徒歩:時速4キロ
・駅伝ランナー:時速20キロ
詳しくは…
以下、村田くんのレポートをご覧ください。
『メロスの全力を検証』愛知県 愛知教育大学附属岡崎中学校2年 村田 一真くん
理数教育研究所ホームページより引用
◆私の考察
数字上は早歩きレベルですが、結果がすべてである。つまり過程はどうであれ友を裏切ることなく戻ったメロスの行為は素晴らしく、このデータによって彼に対する評価は損なわれることはないと考える。
※参考
『走れメロス』とは
小説。太宰治作。1940年(昭和15)「新潮」に発表。
あらすじ
青年メロスは、妹の結婚のために必要な品々を買い求めにシラクスの町を訪れたが、町の様子がひどく暗く落ち込んでいることを不審に思い、市民に何が起きているのかを問う。そして、その原因である人間不信のために多くの人を処刑している暴君ディオニス王の話を聞き、激怒する。
メロスは王の暗殺を決意して王城に侵入するが、あえなく衛兵に捕らえられ、王のもとに引き出された。人間など私欲の塊だ、信じられぬ、と断言する王にメロスは、人を疑うのは恥ずべきだと真っ向から反論する。
当然処刑される事になるが、メロスはシラクスで石工をしている親友のセリヌンティウスを人質として王のもとにとどめおくのを条件に、妹の結婚式をとり行なうため3日後の日没までの猶予を願う。王はメロスを信じず、死ぬために再び戻って来るはずはないと考えるが、セリヌンティウスを処刑して人を信じる事の馬鹿らしさを証明してやる、との思惑でそれを許した。
メロスは急いで村に帰り、誰にも真実を言わず妹の結婚式を急ぎ、夫を信じて誠心誠意尽くすように言い含め、式を無事に終えると3日目の朝まだき、王宮に向けて走り出した。
難なく夕刻までに到着するつもりが、川の氾濫による橋の流失や山賊の襲来など度重なる不運に出遭う。濁流の川を懸命に泳ぎ切り、山賊を打ち倒して必死に駆けるが、無理を重ねたメロスはそのために心身ともに疲労困憊して倒れ込み、一度は王のもとに戻る事をあきらめかけた。
セリヌンティウスを裏切って逃げてやろうかとも思う。しかし近くの岩の隙間から湧き出てきた清水を飲み、疲労回復とともに義務遂行の希望が生まれ、再び走り出す。人間不信の王を見返すために、自分を信じて疑わない友人の命を救うために、そして自分の命を捧げるために。
こうしてメロスは全力で、体力の限界まで達するほどに走り続け、日没直前、今まさにセリヌンティウスが磔にされようとするところに到着し、約束を果たす。
セリヌンティウスに、ただ1度だけ裏切ろうとした事を告げて詫び、セリヌンティウスも1度だけメロスを疑った事を告げて詫びた。そして、彼らの真の友情を見た王は改心したのである。
ウィキペディア「走れメロス」より一部引用