【初心者向け】腹部エコー(超音波)画像と疾患の見方~膵臓・脾臓・腎臓編~

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膵臓とは Pancreas

※上図の肝臓は、他の臓器が死角とならないようにやや小さく描いています。

◇長さ15 cm、重さは70~100gほどで右側が太く左側が細いくさび型の臓器である。

◇おもな働きは蛋白質やデンプン、脂肪を分解する膵液を分泌する。(外分泌)

◇血糖値を調節するインスリンというホルモンを分泌する。(内分泌)


◇膵液に含まれる消化酵素

1日、700~1500ml分泌される。

膵アミラーゼ☞デンプン→麦芽糖
マルターゼ☞ 麦芽糖 → ブドウ糖 )

トリプシン
たんぱく質 → アミノ酸

膵リパーゼ☞ 脂肪 → 脂肪酸・グリセリン

◇膵臓の超音波像


◇図解(超音波像)

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膵臓の基準値(エコー検査)

🔵膵臓の大きさと膵管の直径

プローブの位置(例)上腹部横走査(心窩部横走査)
エコー上の計測位置

基準値

【A】頭部 25mm以下
(腫大>25mm)

【B】体部 20mm以下
(腫大>20mm)

【C】尾部 20mm以下
(腫大>20mm)

【D】主膵管 2mm以下

【E】大きさ 14~16cm

参考・引用文献〔数値のみ〕:『腹部超音波 A side−基礎と臨床のキーポイント37』森 秀明,竹内 真一 メジカルビュー社 2007-11-13 P223.P292

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膵疾患のエコー像

急性膵炎 acute pancreatitis

 病態 

・種々の原因により膵酵素が活性化され膵組織を自己消化する病態。

・成因としてもっとも多いのはアルコールで特発性や胆石によるものも多い。(そのほかERCPや副甲状腺機能亢進症や高脂血症など)

・30~70歳代の男性に多い。

 症状 

・症状は心窩部~背部の持続性の腹痛、悪心、嘔吐、発熱など。

  検査 

血液検査では血清・尿アミラーゼが上昇する。

  腹部超音波検査での主な所見 

・膵臓の腫大(浮腫・出血・壊死)。

・膵輪郭の不明瞭化。

・膵周囲の液体貯留。(fluid collection)

・膵腫大や膵実質エコーの評価に加え,膵周囲~後腹膜腔および腹腔内の液体貯留の所見が病勢を知る上で重要である。

※この画像は超音波検査法フォーラム「急性膵炎」から引用させていただいてます。
下線部をクリックすれば超音波検査法フォーラムに移動します。

慢性膵炎 chronic pancreatitis

 病態 

・アルコールの長期間にわたる多飲などによって、膵臓に持続性の炎症が起こり、膵臓の細胞が破壊されて、不可逆的な膵実質の萎縮と線維化がおこる。

 症状 

・おもに反復する上腹部痛~背部痛。

・食欲不振、悪心、嘔吐、全身倦怠感、体重減少、腹部膨満感など。

 検査 

血液検査では血清・尿アミラーゼが上昇する。

  腹部超音波検査での主な所見 

・膵石

・膵管拡張(3mm以上)

・膵辺縁の不整

・膵嚢胞

・膵の萎縮または限局性腫大

・膵管の不整な拡張

・膵内の粗大な高エコー像など

頭部~体部に膵石が認められる。体部~尾部にかけて径数ミリの高エコー像が散在している。

参考

超音波サイン
ペェナトゥレェイティン ダクト サイン(penetrating duct sign)
膵管穿通徴候のことである。
慢性膵炎に急性炎症が加わる場合に,限局して炎症が起きると膵癌とまぎらわしい腫瘤像を呈す。
この場合,腫瘤内部を主膵管が断裂することなく貫通している所見がみられれば,腫瘤形成性の慢性膵炎と判断される。
膵癌ではみられないため両者の鑑別に有用である。

膵嚢胞(すいのうほう) pancreatic cyst 

 臨床像 

・膵臓内に液体の溜まった袋ができる病気である。

・炎症(急性膵炎や慢性膵炎など)によりできた「炎症性膵嚢胞」と腫瘍により分泌された粘液が溜まった「腫瘍性膵嚢胞」がある。

・大きさは数mmから10cmを超えるものまであり、個数も単発性のものから多発するものまである。

  腹部超音波での主な所見 

・内部は無エコーである。

・辺縁は平滑な腫瘤である。

・後方エコー増強(posterior echo enhancement)がみられる。

膵体部の膵嚢胞

※エコー画像の図解(膵体部の膵嚢胞)

膵臓癌(すいぞうがん) pancreatic cancer 

 臨床像 

・中高年で好発。

・おもな症状は腹痛、悪心、嘔吐、食欲低下、体重減少など。

・発生部位によって黄疸や白色便、無痛性胆嚢腫大がみられる。

・頭体部に多く90%以上が膵管上皮から発生する膵管癌である。

(例:膵頭部癌)

 検査 

血液検査では血清アミラーゼやCA19-9(腫瘍マーカー)が参考になる。

  腹部超音波検査での主な所見 

・実質の境界不明瞭な低エコーの腫瘤像。

・尾側膵管の(数珠状)拡張。

・肝内・肝外胆管の拡張。

・胆嚢腫大。

症例①

膵頭部癌
膵頭部に膵実質よりやや低エコーの,約4cm大の腫瘤が認められる。
腫瘤は不整形で境界は一部で不明瞭となり,周辺組織への浸潤が疑われる。
腫瘤の尾側膵管は径8mmで,拡張が著明である。

🔵図解

※この画像は超音波検査法フォーラム「膵癌1」から引用させていただいてます。
下線部をクリックすれば超音波検査法フォーラムに移動します。

シェーマ(図解):bechi

症例②

膵頭部癌(膵癌術後再発)

🔵図解

症例③

膵体部癌

🔵図解

 

脾臓とは Spleen

※上図の肝臓は、他の臓器が死角とならないようにやや小さく描いています。

・胃の左側にあり、重量は内部の血液量で変化するが100~200g程度である。

・にぎりこぶしほどの大きさをしたスポンジ状の軟らかい赤紫色の臓器。

・おもな働きは古くなった赤血球や白血球、血小板の破壊。(血球の車検場の様な臓器)

※肝臓でも古くなった赤血球は壊される。

○脾臓と健常なエコー

副脾 accessory spleen

脾臓の近くに(脾臓と)同じ働きをする組織が存在する場合がある。

10~20mmの等エコーの腫瘤で副脾と呼ばれている。

脾臓近傍の10mm大の副脾。

脾臓の疾患のエコー像

脾腫  splenomegaly

 臨床像 

・脾腫をきたす疾患として白血病・リンパ腫・溶血性貧血などの血液疾患、 門脈圧亢進症(肝硬変・特発性門脈圧亢進症・右心不全)や敗血症、伝染性単核球症、アミロイドーシスなどが頻度が高く代表的。

  腹部超音波検査での見方 

・脾臓のサイズを計測し脾腫の程度(軽度~高度)を評価する。 

spleen index(スプリーン・インデックス)

spleen index=a×b 脾腫 spleen index>20㎠

 ※千葉大学第一内科の計測法

◇比較

右の症例(脾腫)のスプリーン・インデックスは40を超える。

脾臓の腫瘍性病変  spleen tumor

脾内に低エコーな腫瘤が多発している。

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL:adult T-cell leukemia-lymphoma)

 臨床像 

・原因は、HTLV-1というウイルス感染である。

・沖縄県と南九州に多い。

・多くの場合は発症することはなく経過し、約30~50年間の潜伏期間がある。

・ATL細胞は血液中だけではなくリンパ節でも増殖する。

・多くの場合はリンパ節の腫れがみられるが脾臓や肝臓、肺、消化管、中枢神経系に及ぶこともある。

 
 
 
 

腎臓とは Kidney

※上図の肝臓は、他の臓器が死角とならないようにやや小さく描いています。

ソラマメの種子の様な形をしており、腹の裏側、横隔膜の下に一対ある重さはおよそ150gである。(ノート1冊分)

おもに血液の中から、いらなくなったものや余分な水を尿として、膀胱へ送る働きをしている。 (体液の恒常性の維持

 

※腎臓の働きが悪くなると血液の中に余分なものが残ってしまったり、 水分の調節ができなくなる。

○健常な腎臓のエコー像

腎臓の基準値(エコー検査)

🔵腎臓の大きさ

プローブの位置

(右腎)

(例)右側腹部縦走査

(左腎)


(例)左側腹部斜走査

エコー上の計測位置
基準値

【A】長径 10~11cm
(腫大12cm以上)

【B】短径 4~5cm

参考・引用文献〔数値のみ〕:『腹部超音波 A side−基礎と臨床のキーポイント37』森 秀明,竹内 真一 メジカルビュー社 2007-11-13 P221-233.P292

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腎疾患のエコー像

水腎症と腎結石  hydronephrosis & renal stone

 原因 

・何らかの原因により尿流の停滞が起こり腎内(腎盂)に貯まった状態。(腎盂腎杯が拡張した状態。)

・原因としては尿路結石、尿路腫瘍、前立腺癌、前立腺肥大症(BPH)などがある。

  腹部超音波検査での主な所見 

・結石が詰まって腎盂に尿が停滞するため腎臓の中心部に低(無)エコー域が出現する。

・結石があれば音響陰影を伴い高エコーに描出される。(症例②)

症例①

腎盂拡張が認められたが結石や腫瘍は描出されなかった。

症例②

尿管結石による水腎症

腎嚢胞(じんのうほう)renal cyst

 臨床像 

・腎臓内に液体の溜まった袋ができる病気である。

・腎臓の超音波検査において、最も目にすることが多い病変である。

・ほとんどが良性であり基本的に治療の必要性はない。

・人間ドックなどの超音波検査によって、無症状で発見されることが多い。
(大きくなると腹部腫瘤の触知などの自覚症状が現れることもある。)

・年齢とともにその発生頻度は上昇する。

  腹部超音波での主な所見 

・内部は無エコーである。

・辺縁は平滑で境界明瞭な円~類円形の腫瘤である。

・後方エコー増強(posterior echo enhancement)がみられる。

・充実部を有さない。

症例①

 35mm大の腎嚢胞。

症例②

左腎に多発した腎嚢胞。

腎血管筋脂肪腫  renal angiomyolipoma(AML)

 臨床像 

・血管、平滑筋、脂肪組織よりなる良性腫瘍である。

  腹部超音波での主な所見   

・ほぼ円形で境界明瞭な高エコーの腫瘤である。

・内部は比較的、均一である。

・他の悪性腫瘍(腎細胞癌や脂肪肉腫)などとの鑑別が必要である。

腎細胞癌(じんさいぼうがん)renal cell carcinoma

 臨床像 

・成人の腎臓にできる悪性腫瘍の中で最も多い。

・血尿、側腹部痛、腹部腫瘤の触知などの自覚症状が現れる。

・男女比は3:1で男性に多く好発年齢は50歳後半である。

  腹部超音波検査での主な所見 

・腎表面の外側(被膜外)に突出することが多い。

・腫瘤は低エコーであることが多いが発育段階において様々である。

症例①

症例②

慢性腎不全 chronic renal failure

  腹部超音波検査での主な所見 

・萎縮する。

・腎皮質のエコーレベルが上昇し、CEC(central echo complex | 中心部エコー像)が不明瞭になる。

腎は萎縮し小さな嚢胞が散見される。

超音波サイン
逆肝腎コントラスト
慢性腎不全、ネフローゼ症候群、アミロイド腎などで、腎皮質のエコーレベルが肝臓より上昇しているものを逆肝腎コントラストと呼ぶ。

参考文献:
『実践エコー診断』 日本医師会雑誌特別号 第126巻 第8号 日本医師会
日本超音波検査学会 実用超音波用語集ーサイン集ー

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