【初心者向け】腹部エコー(超音波)画像と疾患の見方~胆道系(胆嚢)編~

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胆道系とは

※上図の肝臓は、他の臓器が死角とならないようにやや小さく描いています。

胆道系には、胆嚢(たんのう)と肝臓内および肝臓外の胆管が含まれる。

◇胆嚢とは、洋なしのような形をした袋状の臓器である。



◇肝臓で作られた胆汁は胆嚢に集められ、必要な時に胆管を通って十二指腸に送られる。胆汁は肝臓から1日に500~800ml分泌される。

◇胆汁は、膵臓からでる膵液と協力して、 食べ物を消化する。(胆汁は脂肪を分解し、消化・吸収しやすい形に変える働きがある。)

健常な胆嚢のエコー像(※水色の矢印)

◇エコー上、健常な胆嚢の内腔は黒く抜けてみえる。壁の肥厚や腫大を認めない。

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胆道系の基準値(エコー検査)

🔵胆嚢の大きさ

プローブの位置
(例)右季肋部縦走査(左下側臥位)など
エコー上の計測位置
基準値

【A】長径 6~8cm
(腫大>8cm)

【B】短径 2~3cm
(腫大>4cm)

【C】壁の厚さ 3mm以下
(壁肥厚 4mm以上)

🔵総胆管の直径

プローブの位置
(例)右季肋部縦走査(左下側臥位)など
エコー上の計測位置
基準値【A】7mm以下
セブンイレブン ルール Seven-eleven rule
肝外胆管の最大径を測定して次のように考える。
・7mm以下を正常、
・7~11mmはborderline、
・11mmを越える場合は明らかに異常

参考・引用文献〔数値のみ〕:『腹部超音波 A side−基礎と臨床のキーポイント37』森 秀明,竹内 真一 メジカルビュー社 2007-11-13 P214.P292

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胆嚢(たんのう)の疾患のエコー像

胆嚢内ポリープ(様病変) polypoid lesion of gallbladder

 臨床像 

・胆嚢ポリープは30歳代に多く加齢による減少がみられる。

・胆嚢内ポリープ様病変は、ほとんどがコレステロールポリープで大きさは1㎝未満のものが多く多発性である。

・形状は有茎性で金平糖状、桑実状、乳頭状など多彩である。

症例①

 ※赤い矢印(胆嚢ポリープ)

  腹部超音波検査での主な所見 (典型例)

・胆嚢内の隆起性腫瘤像。

・音響陰影(おんきょういんえい)を伴わない。
【胆嚢結石との鑑別所見】

・体位変換による可動性はない。
【胆嚢結石との鑑別所見】

・一般的に胆嚢結石よりエコーレベルが低い。
【胆嚢結石との鑑別所見】

・1㎝以上(経過観察<1㎝≦手術の対象)のポリープは胆嚢癌も疑われるので胆嚢漿膜面や周囲のリンパ節、隣接臓器なども注意深く観察する。

※特に有茎性(根元が細く茎様)広基性(根元が幅広い)かはエコー上、大切な鑑別ポイント。広基性で内部エコーが不均一なものは、胆嚢腺腫や胆嚢癌を疑う。

症例②

径が数ミリの小さなポリープ様病変

症例③
有茎性のポリープ

 

胆嚢胆石症 cholecystolithiasis(GB stone)

 臨床像 

・胆石は男女とも加齢による発生増加を認める。

・症状は右季肋部痛、心窩部痛、発熱、嘔吐、黄疸などで嘔吐を伴うが無症状胆石(silent stone)もある。

・胆石の数や大きさ、結石の成分(コレステロール系石、ビリルビン系石など)は様々である。

・胃切除(迷走神経の切断)で胆石ができやすくなる。

  腹部超音波検査での主な所見 (典型例)

高エコー(白い)に映り音響陰影を伴うことが多い。
【胆嚢ポリープとの鑑別所見】

・体位変換すると(胆嚢内)動く。
【胆嚢ポリープとの鑑別所見】

エコー用語 音響陰影(acoustic shadow/アコースティックシャドウ)とは?
結石など硬いものの後ろに黒い影ができる現象である。
つまり後方に音響陰影ができるもの=硬いものと考えることができる。

症例①

大小の胆嚢結石

右の写真に認められる胆嚢の壁から下に向かって出現したつららまたは彗星様の線状高エコー[コメットライクエコー(comet like echo |comet sign)]は、胆嚢の壁内結石の存在や胆嚢腺筋腫症などが疑われる所見である。後述する。

症例②

数ミリの胆石を多数認める。

超音波サイン
ローリング ストーン サイン(rolling stone sign)
音響陰影を伴わない胆嚢の小結石が,体位変換によって移動性が認められる様子をいう。

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胆嚢腺筋腫症(gallbladder adenomyomatosis)

○胆嚢腺筋腫症とは?
胆嚢の壁がいろいろな様式に厚くなることを特徴とする病変で、胆嚢の粘膜上皮が胆嚢壁の筋肉の層にまで入り込んだポケットのようなものをロキタンスキー・アショッフ洞[RAS|Rokitansky-Ashoff洞]と呼びそれが多発したものである。


病変の部位や広がりから、主に3つの型に分類されている。

①底部型(限局型):底部を中心に限局した腫瘤を形成する。
②分節型(輪状型):頚部や体部に全周性の壁の肥厚をきたし、内腔が狭くなる。
③びまん型(広範型):全体にわたってびまん性の壁肥厚を認める。

 臨床像 

・無症状のことが多い。腹部エコーなどで偶然見つかることもある。

・胆石を伴う場合は右上腹部の痛みや吐き気をおこすこともある。

  腹部超音波検査での主な所見 

・壁肥厚

・壁内嚢胞像(RAS)を認める。

コメット様エコーcomet like echo)を認める。

・胆石を伴うことが多い。

超音波サイン
コメット ライク エコー(comet-like echo)
高輝度エコーの後方に彗星のような白い縞がみられ,深部にいくほど小さく,おたまじゃくしの尾のように描出される現象をいう。(アーチファクトの一種で多重反射による。)対象物の超音波反射強度が音響陰影を伴うほど強くなく,対象物のみで超音波の往復が起こるために生じる。
胆嚢の壁在結石の存在や胆嚢腺筋腫症が認められる胆嚢で観察される事がよく知られているが、 肝臓、胆管、膵臓、脾臓など、いろいろな場所の超音波像で使われる。

胆嚢腺筋腫症:コメット様エコー(comet like echo)と壁内嚢胞像(RAS)

総胆管結石 CBD stone

◇総胆管とは

○総胆管結石とは?
胆汁のなかに含まれているものが結晶となり大きくなってできたものを※結石という。
その中で総胆管にできたものや胆嚢から総胆管内に出てきたものを総胆管結石と呼ぶ。

※胆管結石のほとんどは、胆嚢で生成されたビリルビンカルシウム結石(ビリルビンとカルシウムの結晶)である。

 症状 

・症状が全くない場合もあるが、結石が胆管に詰まると痛みが生じる。

・上腹部痛があり、血液検査ではビリルビン↑・AST↑・ALT↑、胆道系酵素(γ-GTP↑・ALP↑)が見られることもある。

  腹部超音波検査での主な所見 

・総胆管拡張。

・総胆管内のストロングエコー。

・音響陰影を伴うことが多い。

症例①

総胆管内に扁平な小結石が認められる。

症例②

総胆管径は12mmと拡張している。
本症例は、結石というよりdebris状であり音響陰影も見られない。
※このような性状のものは、腫瘍の可能性も否定できないため、他検査での精査を要する。

超音波サイン
セブンイレブン ルール(seven-eleven rule)
肝外胆管の最大径を測定して次のように考える。
・7mm以下を正常、
・7~11mmはborderline、
・11mmを越える場合は明らかに異常

急性胆嚢炎 acute cholecystitis

 原因 

・胆石が胆嚢頚部や胆嚢管に嵌頓(かんとん☞はまり込んでしまい動かなくなった状態)、閉塞し細菌感染が加わることによって起こる。

 症状 

・症状は強い右季肋部痛を示し胆嚢に一致した圧痛や右肩、右上肢に痛みが放散する。(その他悪寒を伴う発熱や嘔吐など。)

  検査 

血液検査では炎症所見(WBC:白血球数↑・CRP↑)胆道系酵素(γ-GTP↑・ALP↑)が参考になる。

  腹部超音波検査でのおもな所見 

・エコーで同定される胆嚢部の圧痛所見がもっとも特異的である。(超音波マーフィー徴候Murphy’s sign)

・胆嚢腫大。(緊満感:ぱんぱん)

・(嵌頓した)胆石、胆泥(debris)の貯留。

・壁肥厚。(必ずではない) など。

※急性胆嚢炎のシェーマ(結石の嵌頓)

関連 急性胆嚢炎のエコーサイン

超音波サイン①
ソノルーセント レイヤー(sonolucent layer)
急性胆嚢炎などで炎症が高度の場合に,胆嚢壁が高・低・高の3層構造として描出されるが,このうちの粘膜と漿膜との間の低エコー層のことを意味する。
胆嚢漿膜下の浮腫や壊死を反映している。

超音波サイン②
ストリエーテッド イントラミューラル ルーセンシー(striated intramural lucency)
急性胆嚢炎の際に,肥厚した低エコーを呈する胆嚢壁内にみられる不整で不連続なすじ状エコー帯。(不整で互い違いになっているような不連続なエコー帯で急性胆嚢炎での特異度は高い。)

慢性胆嚢炎 chronic cholecystitis

 病態 

・急性胆嚢炎が治癒、固定化したものと慢性に経過するものがある。
(臨床的な病名ではなく病理組織学的な疾患概念。)

・胆嚢は急性の炎症が繰り返されることで損傷を受けている。
多くは胆石によるもの(約90%)で、胆嚢壁が厚くなり、胆嚢は瘢痕のために小さくなる。

明らかな急性胆嚢炎発作の経験がなくても、結石を有し慢性的に胆嚢壁の損傷が繰り返されると慢性胆嚢炎の変化が現れる。
壁の輝度は高く不均一に厚い。
胆嚢癌が発生しても早期に発見することは難しい。

※この画像および解説文は超音波検査法フォーラム「慢性胆嚢炎」から引用させていただいてます。
下線部をクリックすれば超音波検査法フォーラムに移動します。

  腹部超音波検査でのおもな所見 

・胆嚢萎縮。

・全周性の壁肥厚。(不均一。)

・胆嚢壁の輝度が上昇する。

・収縮能低下。

・胆石や胆泥を伴うことが多い。

陶器様胆嚢 porcelain gallbladder

 病態 

・慢性胆嚢炎が進行して胆嚢壁が石灰化した状態(胆嚢壁に広範な石灰化をきたし、外観上及び硬度が陶器様に変化した病変と定義されている)。

・陶器様胆嚢は癌のリスクが高いと考えられている。

  腹部超音波検査でのおもな所見 

・胆嚢壁に広範な石灰化を認める。

・胆嚢壁に一致した音響陰影の影響で内腔が不明瞭なことが多い。

胆嚢底部の壁が弧状に石灰化している。
音響陰影の影響で胆嚢内腔は明らかではない。

◇シェーマ

超音波サイン
シェル サイン(shell sign)
(内腔が描出されない場合に,)強い音響陰影を伴った貝殻(shell)に似た弧状のストロングエコーが胆嚢窩に一致して描出される。

胆嚢癌(たんのうがん) gallbladder cancer

 臨床像 

・50~60歳代の女性に多い。

・初期症状に乏しい。(食欲不振、体重減少など。)

・進行すると黄疸、上腹部疼痛、右季肋部腫瘤を生じることがある。

・発見時にはすでに進行癌で多彩な転移・浸潤がみられ根治手術が不可能なことが多い。

・胆嚢癌の約80%は腺癌(adenocarcinoma アデノカルチノーマ)で浸潤がおこりやすく進行も速い
☞胆嚢は粘膜筋板を持たないため進展しやすい。

・胆石の合併は60~70%にみられる。

  腹部超音波検査でのおもな所見 (典型例)

・広基性。

・胆嚢内に辺縁不整な腫瘤形成。

・不均一な胆嚢壁肥厚。

・胆嚢内腔の粘膜像の欠如。

・肝床側への浸潤像。

・胆管狭窄像。

胆嚢癌

※図解

参考文献:
『実践エコー診断』 日本医師会雑誌特別号 第126巻 第8号 日本医師会
日本超音波検査学会 実用超音波用語集ーサイン集ー

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