もくじ
消化管について
※上図の肝臓は、他の臓器が死角とならないようにやや小さく描いています。
胃 Stomach
🔵胃は胃液を出し、食べ物がどろどろのかゆ状になるまで、はたらいて十二指腸へ送る。
🔵塩酸や消化酵素で1日、1.5~2.5ℓ分泌される。
胃液に含まれる消化酵素
胃リパーゼ☞脂肪→脂肪酸・グリセリン
十二指腸 Duodenum
🔵十二指腸は、指12本を横に並べた長さということからこの名がつけられた。
実際には指12本ぶんよりも長く、25cmほどである。
🔵十二指腸には胆嚢や膵臓につながっている穴から、胆汁や膵液が分泌され、胃から送りこまれた食べ物を更に消化する。
小腸 Small intestine
🔵長さは、約6 ~7メートルである。
🔵十二指腸から送られた食べ物は、小腸でその栄養分を消化、吸収され養分は門脈経由で肝臓に運ばれる。
小腸で吸収されるもの
炭水化物 → ブドウ糖
たんぱく質 → アミノ酸
脂肪 → グリセリン・脂肪酸
大腸 Colon
🔵長さは、およそ1.5メートルである。
🔵小腸で吸収されなかった水分やミネラルを吸収する。
🔵大腸には大腸菌などの細菌がたくさんいる。
🔵残りカスは、便となって体外に排泄される。
消化管のエコーについて
☞ポイント
🔴通常、胃・十二指腸・小腸・大腸など内腔に空気を含む消化管は、超音波が通りにくく描出が困難なことが多い。☞EUS(超音波内視鏡検査)が有効。
🔴イレウス(腸閉塞)や腸重積などでは特徴的な所見を呈す。
🔴進行した悪性腫瘍はしばしば指摘される。
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消化管の疾患のエコー像
消化管の悪性腫瘍
胃癌(gastric cancer) 大腸癌(colon cancer )
腹部エコーにて早期の消化管癌(がん)を検出することは困難である。
しかし病変の位置にもよるが進行癌の多くは描出される。
・低エコーレベルの歪な腫瘤像。(襞様の構造はみえず塊状。)
・限局した壁の肥厚。
(pseudo-kidney sign:シュード(偽物の)キドニー(腎臓)サイン☞腎臓の超音波像のように見えることからそう呼ばれる。)
シュード キドニー サイン(pseudo kidney sign)
消化管壁の全周性の肥厚像が腎臓の超音波像に類似することから称される。
周囲の壁肥厚像は低エコーに,中心部の内容物や粘膜像は高エコーとして描出される。
進行大腸癌
pseudo-kidney sign(シュード(偽物の)キドニー(腎臓)サイン)を呈した
大腸癌の超音波像。
健常な腎臓
胃癌
健常な胃と胃癌の超音波像(塊状の進行胃癌)
肝転移を伴った胃癌。(黄色の矢印:肝転移)
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腸閉塞(イレウス) ileus
・種々の原因により腸管内容物の通過が障害された状態である。
・物理的な閉塞(※1機械的イレウス)と腸管に分布する神経・血管の障害による(※2機能的イレウス)に大別される。
・機械的イレウスが90%で、もっとも多いのが腸管癒着によるものである。
・共通の症状は排ガス・排便の停止、腹部膨満、嘔吐、脱水がある。
※1 機械的イレウスは2つに分けられる。
●単純性(閉塞性) イレウス:腸間膜血行の停止(ー)。
●複雑性(絞扼性)イレウス:腸間膜血行の停止(+)で腸管壊死を伴う。
※2 機能的イレウスは2つに分けられる。
●麻痺性イレウス:(原因)腹膜炎や胆嚢炎など
●痙攣性イレウス:(原因)神経衰弱など
・腹部聴診でカラコロやキーンなど金属音(metallic sound)が聴取される。
・腹部X線検査にて多数の腸管ガス像と鏡面形成像(niveau:二ボー)を認める。
参考画像
鏡面形成像(niveau:二ボー)☞腸管内の空気と液体の境に水平の陰影がみられる。
・閉塞があるため腸管拡張を認め多数の輪状ヒダ[ケルクリング襞(ひだ)]が内腔に索状に突出してみられ、ピアノの鍵盤に類似した特徴的な像(keyboard sign:キーボードサイン)がみられる。
・複雑性(絞扼性)イレウス場合、※to and fro movementが消失する。
キーボード サイン(keyboard sign)
拡張した小腸内でkerckring皺壁(ケルクリングしゅうへき)がピアノの鍵盤状(keyboard)に類似した像を呈す。
kerckring皺壁の密度の差により,十二指腸から空腸の拡張では典型像を呈するが,回腸ではこの所見に乏しくなる。
keyboard sign:キーボードサイン
急性虫垂炎 acute appendicitis
・何らかの原因で虫垂が閉塞し、内部で細菌が増殖して感染を起こした状態。
・急性腹症の原因としてもっとも多い。
・幼児期以降に好発。
・発熱(37~39℃)、腹痛、悪心、嘔吐など。
※腹痛初期は心窩部痛でその後、右下腹部に限局するMcBurney点(マックバーニーの圧痛点)に圧痛を呈し※筋性防御を伴う。
※筋性防御☞腹部触診時、腹壁の筋肉が緊張して硬くなっていること。
●マックバーニーの圧痛点☞右下腹部(右の腰骨とへそを結ぶ線を3等分し、右から3分の1にある点)にある部位である。
・虫垂の腫脹像。
・周囲の貯留液。(腹水、膿瘍)
・糞石がみられることもある。
※この画像は超音波検査法フォーラム「急性虫垂炎」から引用させていただいてます。
下線部をクリックすれば超音波検査法フォーラムに移動します。
参考文献:
『実践エコー診断』 日本医師会雑誌特別号 第126巻 第8号 日本医師会
日本超音波検査学会 実用超音波用語集ーサイン集ー
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ステップアップ
ある程度、腹部エコーに慣れて余裕ができたら、各疾患についてレントゲンやCTなどの検査所見、さらには手術や治療法まで幅広く理解しておくとよいでしょう。
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初心者にもわかりやすい。