私が以前、勤務していた病院及び非常勤のクリニック用に作成した腹部エコーの所見用紙を使って書き方を説明していきます。
とってもアナログで、特に優れているわけでもありません。
参考程度でご覧くださいませ。
☟※腹部エコーの所見用紙(報告用紙)
肝臓
必要があれば、所見用紙右側の余白に所見を記載します。
edge(辺縁)
・sharp(鋭)
[・slightly dull(やや鈍化)がある施設もあります。]
・dull(鈍)
surface(表面)
・smooth(平滑)
・irregular(不整)
・nodular(ごつごつ)
innerecho|internal echo(内部エコー)※
・homogeneous(均一)
・heterogeneous(不均一)
・rough(粗雑)
※表現法が異なると思います。 (fine ・coarse・irregularなどなど)
各施設でご確認ください。
必ずとは言えませんが概ね……
[sharp(鋭)/smooth(平滑)/homogeneous(均一)]☞健常肝
例②
[dull(鈍)/nodular(結節様)/rough(粗雑)]☞肝硬変(LC|liver cirrhosis)
のような感じになります。
hepatorenal contrast (肝腎コントラスト)
・(-)
☑(+)の場合、肝臓と腎臓のエコー輝度の差の程度をみます(肝脂肪の沈着の程度。)。必要があれば所見を記載します。
SOL [space occupying lesion|占拠性病変]
・(-)なし
☑肝内のSOLの有無。(肝嚢胞や肝腫瘍など)
(+)の場合、サイズ、性状及び領域(Couinaud分類などを使用する。)を記載します。
参考:Couinaud分類(クイノー分類)
※別の分類(Healey& Schroy分類)を使用する施設もあります。各施設にてご確認くださいませ。
IHBD[intrahepatic biliary duct|肝内胆管] dilatation
・(-)
☑両葉の肝内胆管の拡張の有無。
(+)の場合、その様子を記載します。
関連ページ
脾臓
splenomegaly(脾腫 )
・(-)
☑脾腫の有無。
spleen index(スプリーン・インデックス)
千葉大学第一内科の計測法
※他にもいろいろな評価方法があります。
☑脾臓内にSOL[脾膿瘍・脾梗塞・脾腫瘍(転移性・血管腫・悪性リンパ腫など)]を認めた場合、サイズ、性状などを記載します。
総胆管(CBD|common bile duct)
dilatation[(総胆管)拡張]
・(-)
☑拡張の有無。(径は7ミリ以下が正常)
径(mm)を記載します。
7mm以下を正常、
7~11mmはborderline、
11mmを越える場合は明らかに異常とします 。
☑結石や腫瘍の有無を確認します。
(+)の場合、大きさや性状などを記載します。
胆嚢
□ post cholecystectomy(胆嚢摘出後)
stone(胆嚢結石)
・(-)
☑結石の有無。
(+)の場合、形状、サイズ及び数を記載します。依頼医に様子を的確に伝えるためシェーマを用いることもあります。
wall thickening(胆嚢壁肥厚)
・(-)
☑壁肥厚(4ミリ以上)の有無。
(+)の場合、依頼医に様子を的確に伝えるためシェーマを用いることもあります。
debris[biliary sludge(胆砂)|biliary debris(胆泥)]
・(-)
☑胆泥・胆砂の有無。
(+)の場合、依頼医に様子を的確に伝えるためシェーマを用いることもあります。
polyp(胆嚢ポリープ様病変)
・(-)
☑ポリープ様病変の有無。
(+)の場合、性状、サイズ及び位置などを記載します。依頼医に様子を的確に伝えるため、さらにシェーマを用いることもあります。
☑腫瘍性病変との鑑別。
☑腫大、緊満、萎縮など胆嚢全体に異常所見があれば記載します。
関連ページ
膵臓
head ~ body ~ tail(膵頭部/膵体部/膵尾部)
・ 所見あり
☑頭部、体部、尾部のうち観察できた領域を○で囲みます。それぞれ、病変の有無を確認し(所見あり)の場合、詳細を記載します。
※n.p.(no particular )異常なし
MPD(main pancreatic duct) dilatation [主膵管拡張]
・(-)
☑主膵管拡張の有無及び形状。(径は2ミリ以下が正常)
(+)の場合、径(mm)を記載します。膵管壁の不整などもあれば記載します。
☑結石や腫瘍の有無を確認します。
(+)の場合、性状やサイズなどを記載します。依頼医に様子を的確に伝えるためシェーマを用いることもあります。
腎臓
rt(右腎)
・所見あり
☑右腎の病変(腫瘍、結石、腎盂拡張など)があれば記載します。
lt(左腎)
・所見あり
☑左腎の病変(腫瘍、結石、腎盂拡張など)があれば記載します。
関連ページ
体腔液
胸水(pleural effusion)
・(-)
☑胸水の有無。
(+)の場合、およその量や貯留領域を記載します。
腹水(ascites)
・(-)
☑腹水の有無。
(+)の場合、およその量や貯留領域を記載します。
その他
☑消化器や婦人科領域などの病変があれば記載します。
関連ページ
超音波診断
以上が、大まかな所見用紙の書き方です。誤字脱字が多いと、所見自体の信憑性が低いと思われる可能性があります。報告前には、よく推敲しましょう。
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🔴腹部エコーサイン集
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出版社からのコメント
本書は使いやすいA5サイズに、限りなく本物に近い形で報告書を掲載し、所見記載のポイントをしっかりとまとめました。所見を書くために必要な観察・読影のテクニックなど、内容は盛りだくさんです。小さめサイズの割には、ぎっしりと中身の詰まった一冊だと思います。